研究概要 |
本研究は,小型自律ロボット群を用いてロボット間の協調動作により,様々な荷役作業を行わせるのための方法論の提案を目的として,競争系の数理モデルの一つである囚人のジレンマを拡張したIPDアーキテクチャの構築と協調的荷役作業への適用を試みた. 平成9年度においては,主にIPDアーキテクチャの理論的基盤の整備と小型移動ロボットを用いた実験環境の整備を中心に行い,その成果は以下の通りである. 1.ジレンマ理論を中心としたゲーム理論の応用法の検討と計算機シミュレーション. ここでは,移動ロボット群の行動制御理論の構築のために必要となるIPDアーキテクチャを構築し,計算機実験によってその行動制御の可能性を確かめた. 2.小型移動ロボットの群の行動シミュレーションモデルの構築. 小型移動ロボットKheperaを想定したシミュレーションモデルの構築を行い,そこでの仮想的協調作業の可能性を示した. 3.トラキッングビジョンを用いた小型移動ロボットの運動状態観測設備の開発. 実際の小型移動ロボットKheperaの運動を定量的に計測することを目的として,ビションによる観測システムを開発した.そこでは,パターンマッチングにより対象物体を実時間で高速追跡可能な装置であるトラッキングビジョンを用いて構築し,複数台のKheperaロボットの追跡実験を通して,それらの運動状態を同時観測可能であることを確認した. このように,現在,実機を用いた荷役作業へ向けて理論基盤と実験環境が整いつつある.平成10年度には複数の移動ロボット制御に対して,IPDアーキテクチャに基づいた行動原理を導入し,荷役運搬作業に適用し,そこでの協調行動と目的達成行動の関係について詳細な検討を行う予定である.
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