研究概要 |
荷役作業を自動化する試みは次世代自動化倉庫システムなどに於いて、不可欠な課題として広く認識されており、オートメーションを主軸とする産業界の主要な研究テーマとされてきた。 しかしながら、この種の問題は組み合わせ的問題として解くには計算時間がかかり過ぎるため、並列処理や自律分散処理など複数のスケジューラを用いて負荷分散をおこない、処理時間の短縮を狙う方法論が有効性が主張されてきたが、スケジューラが適切な機能を付加されて設計がなされることが必須であり,この「適切な機能の設定」が問題解決の重要なキーポイントであった。 そこで、本研究はこの問題に対して、競争系の数理モデルを応用することにより、問題の解決を試みた。荷役作業をおこなう主体をロボット群とし、各ロボットはスケジューリングの機能と荷役作業の両方の機能を有するものとした。全体の荷役作業の処理効率はロボット群の作業効率によって測定可能であるので、作業効率をロボット群全体への評価値としてフィードバックすることにより、各ロボットはその評価値をもとに機能設計を独自の判断で行えるような自己学習系を構築した。このような設定のもとに、自己学習系は競争系の数理モデルの一つである囚人のジレンマを拡張したIPDアーキテクチャにより構築し、この数理モデルを用いた荷役作業問題への適用結果が、本研究の成果としてまとめられている。 すなわち本研究の結論として、荷役問題というスケジューリングと作業分担、組み合わせ問題などの2種類以上の問題が複雑に入り組んだ問題に対して、IPDアーキテクチャという新しい概念を導入することにより、ロボットのスケジューラを自己の評価基準に基づいて自律的に設計できるような方法論を構築し、さらにこのようなロボット群を用いて荷役作業という課題に取り組むロボット社会システムの様相を明らかにし、論文等に公表した。
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