研究概要 |
本年度の研究成果は以下の3点に大別される。 (1)素材(Tb_<0.3>Dy_<0.7>Fe_<1.9>)の組成・形状・寸法を決定し、その製造および加工法を確立した。 (2)上記素材の形状寸法に準拠してコイル設計を含むポジショナの基本設計を行った。 (3)ポジショナの温度計測を通じてコイル内の発熱状況を把握し,構造的に熱膨張を低減する方策を考案した。 (1)においては,上記組成のTb,Dy,Feより従来型のブリッジマン法で作製したインゴットをワイヤーソ-を用いてダイシングすることにより,断面1mm角,長さ20mmの角柱材料を作り出すことに成功した。この際,加工熱による材料特性の劣化・酸化などは見られなかった。 (2)については,ポジショナ全体の小型化,超磁歪材料の駆動条件の最適化および熱膨張を検知する機能として次のような工夫が施されている。 ・ハウジング一体構造:超磁歪材料に適切な予荷重を与える機能を一体構造のハウジングに持たせることによって構造の簡素化・小型化が達成できる. ・予荷重の定量管理:ハウジングの一部をセンサ化することによって正確な予荷重設定が可能となる。検出にはひずみゲージを用いている。 ・熱膨張の検出:上記ひずみ検出機能を熱変形の検出に適用することにより,駆動中の熱影響を知ることができる。同信号を用いてソレノイドコイルへの駆動電流を制御することにより,能動的な熱補償が可能となる。 (3)に関しては,コイルの発熱によって実際にどの程度の温度になっているかを計測した。その結果,長時間連続駆動する場合には,(2)で述べたフィードバック制御のみでは補償限界を越えてしまうことが判明し,制御を行う以前の熱膨張を別途低減する必要があることが判った。そこで見掛け上の熱膨張を大幅に低減した上でフィードバック制御を行う手法を考案した。
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