研究概要 |
本年度は,前年度までに得られた様々な知見,すなわち,試作1号機で観察された熱膨張に関する問題点,有限要素法を用いた磁場解析などの結果に基づき,2号機の設計・製作およびその評価を行った.また超磁歪材料の特性を評価する目的で,同様の材料を用いたクランパの開発を平行して行った.ポジショナ試作1号機において顕著に確認された,駆動用ソレノイドコイルの発熱が起因する超磁歪材料の熱膨張に対処するため,部品点数は若干増えるが,システム全体の小型化を大きく阻害する強制冷却装置などを導入せずに,熱膨張の影響を抑える手法を考案した.具体的には,2号機を構成するそれぞれの部品の熱膨張係数や磁性の有無を考慮した上で部品素材の選択を行い,トータルでポジショナの出力端に熱膨張の影響が現われにくい構造とした.さらに熱膨張の影響を正確に計測するために,駆動用コイルのジュール熱を熱源に用いるのではなく,外部よりアクチュエータを所望の設定温度に加熱制御しながらポジショナ出力端の変位や予荷重検出部のひずみ出力,必要な箇所の温度を同時に計測可能なシステムを構築した.その結果,1号機に比較して約4分の1程度の熱膨張に抑えられており設計改良の効果が確認された.ただし熱膨張をしてほしくない箇所に使用した低熱膨張材料(スーパーインバ)の熱膨張係数が温度に依存することの影響が現われており,設計仕様の10分の1以下には達していない.これに加えて,さらに検出部のセンサ信号をもとにコイル駆動電流に対するフィードバック制御を行うことによって見掛け上約10分の1程度まで低減化することができた.
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