研究概要 |
本研究は,自立型移動式移乗機を開発することを目的としている.本年度は,昨年度実施した生体計測結果を踏まえ,移乗機構部及び移動機構部の制御手法について検討を行った.移乗機構部は,3連ベローズアクチュエータにより回転する回転機構部と直動シリンダの先端に拮抗ベローズを配置した直動機構部から構成されている.そのため,被介護者に対し力制御を行わせる手法として,回転機構部の3連ベローズにより,力制御を実現することが可能である.しかしながら,微細な力制御を行わせることが難しいことから,サポータ部に配置した拮抗型ベローズを利用する方法を提案した.また,被験者の体重移動の方向をサポータ部の位置から推定し,被験者の移動方向に追従する手法について検討を行った.さらに,被介護者がもたれかかるサポータ部形状に関して,被介護者の体型に合わせた形状が要求されることが分かった,座位からの移乗動作の解析に関しては,さらに被験者を追加して生体計測を行った.これらのデータをもとに,被験者の体型により被介護者を支える力の初期設定方法及び移乗動作中における設定方法について検討した. 移動機構部に関しては,小型軽量な機構を開発するために,空気圧モータを用いた移動機構について基礎特性を明らかにした.空気圧モーターとしては,ベーン形モータとピストン型モータについて検討を行い,移動機構として低速高トルクのピストン型モーターを活用することとした.空気圧モーターを使用する場合,空気消費量が多いことから,増圧弁による再加圧システムすなわち回生制御について実験を行った.増圧弁の基礎特性を明らかにするため,一定圧力を充填したタンクに増圧弁を取り付けた時の増圧効果について明らかにした.さらに,空気圧モータの排気圧を再加圧する回生制御について検討を行った.具体的には,圧力充填したタンクを空気圧源とし空気圧モータを駆動し,モータの排気圧を増圧弁により再加圧し,空気源とするタンクに回生する方法等を試みた.回生制御を行うことにより,空気圧モータの駆動時間が2倍以上増大し,駆動時間の改善を図ることが確認できた.しかしながら,現存する増圧弁は,再加圧の応答性が遅いことから増圧弁を利用した空気圧モータの利用には問題があることが分かった.そのため,空気圧モータの再加圧に適した増圧弁の開発を検討することとした.また,現存する空気圧モータは,空気消費量が多いことから,空気消費量を抑え,かつ軽量な空気圧モータの開発についても同様に検討を行うこととした.さらに,移動機構部,移乗機構部から構成される自立型移乗機を連続して駆動させるためのシステムについて,ソフトウエア及びハードウエアの開発を行った.
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