撥水性粒子と親水性粒子からなる多孔質層への液浸透現象の理論を検証するため、親水性の球状シリカ粉とこれに表面撥水処理した同径粒子の混合層に液体を浸透させる実験を行ってきた。今年度は、液浸透の進行状況を電気伝導度で計測する手法を導入し、過渡的な液浸透現象を調べた。その結果、液浸透速度は撥水性粒子と親水性粒子の比率によって殆ど変化せず、撥水性粒子比率がある比率以上になると液連結が切れ、液浸透が困難になるという考え方は妥当でないことが判明した。一方、電気伝導度は、連結の確率に基づく液浸透理論から予測される通り、撥水性粒子比率が65%以上になると急激に低下し、液連結が困難になることを実証することが出来た。空間当たりの液の浸透量は、撥水性粒子比率にほぼ比例して変化し、ある撥水性粒子比率から浸透量が急に低下する現象はなかった。 以上の結果、撥水性粒子と親水性粒子の多孔質層からなる燃料電池用ガス電極の触媒層では、液浸透量に関しては、両粒子の割合にほぼ比例した値が得られるが、イオン伝導のために必要な液連結に関しては撥水性粒子比率があるレベル以上で急激に低下する閾値が存在するので、確率計算で連結が確実な撥水性粒子比率の範囲で触媒層を構成することが必要と言える。 リン酸型燃料電池用電極のリン酸浸透現象の解析に役立てるため、前年度、リン酸の粘度と表面張力を測定し、100℃以上で表面張力が温度と共に上昇する現象を観察した。これは、円環法の標準測定器を用いて求めた値であったが、100℃以上では誤差が大きくなることが分かり、毛管法による測定に変えたところ、表面張力は温度と共に低下する妥当な結果を得た。
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