本研究の目的は、内部磁石形同期電動機の過渡安定度を解析と実験とにより解明し、内部磁石形同期電動機の定常運転時の定格出力を最大出力の何%にしたらよいのかを、具体的に決定するデータを提供することである。本研究の期間は平成9年度から平成11年度の3年間である。平成9年度は本研究の初年度であり、平成10年度に試作予定の内部磁石形同期電動機の過渡安定度の解析を行った。ここで、内部磁石同期電動機の固定子には市販の誘導電動機を使用、回転子構造は定格電圧の下でリラクタンストルクを最大限利用したもので、永久磁石の体積を極力小さくしている点に特長がある。試作電動機の一つは、回転子にかご形巻線を内部磁石形同期電動機である。もう一つは、かご形巻線をもたない内部磁石同期電動機である。本年度は、これらの電動機を平衡三相交流電源で定電圧駆動した場合の負荷急変時の過渡安定度解析を行った。ここでは、筆者が独自に開発した「慣性モーメントと空間高調波の影響を厳密に考慮した永久磁石同期電動機の過渡特性解析法」を用いて、上述の二種類の電動機の定常負荷特性と負荷急変時の過渡特性の解析を行った。本研究での成果は以下のようになる。 1.負荷急変時の過渡特性解析では、電磁界方程式、電気回路方程式、運動方程式に適用する時間差分値は、空間高調波磁束によるトルク脈動を考慮して、十分小さい値としなければならないことを示した。 2.かご形巻線は負荷急変時のダンパー効果に大きく寄与していることを明らかにした。 3.ダンパー効果を考慮できない等面積法に比べて、ダンパー効果を考慮した本解析では過渡安定極限電力がかなり大きくなっていることがわかった。 これらの研究成果の一部は本年5月及び8月開催の電気学会回転機研究会に報告予定である。
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