研究概要 |
真空中の絶縁破壊現象は電界電子放出により支配されていると考えられているので,本研究では,電界放射電子顕微鏡を用いて電界電子放出点を映像化すると同時に,その点に紫外線を照射して光電子放出を生じさせた場合の電子放出点の像の変化を観測する. 研究初年度である今年は,実験装置の準備と予備実験に充てられた.まず,既に準備されていた電界放射電子顕微鏡のレンズコラムおよびチャンネルプレート,そして本補助金により用意された試料位置決め用マニピュレータ等を既設の超高真空容器に取り付けた.次いで,光電子放出による電極表面状態観測に用いる紫外線光源を本補助金により購入し,実験装置に装荷した.さらに,実験を行うのに必要なさまざまな真空部品および電子部品も用意が終わり,現在,概ね実験装置の準備が完了し,調整および予備的な実験を行っているところである. これまでに行われた実験とその結果,ならびに今後の課題は次の通りである. 1.電界電子放出素子を用いて電界放射電子顕微鏡の動作確認および調整を行った. 2.その電界電子放出素子で得られた像は,細かに振動していることが観測された.これは,電子放出点が移動していることを表しているものと考えられたが,今後詳細な観測が必要である. 3.この顕微鏡を用いて,真空ギャップ用の無酸素銅陰極表面に電界電子放出点が観測された.その電子放出点は,複数個の電子放出点から成ることが見出された. 4.以上の結果は,電気学会全国大会で発表予定であり,また国際会議にも投稿中である. 5.今後,電界放射電子顕微鏡の動作特性をより詳細に把握することと,紫外線照射による光電子放出像を得て,電子放出点の像の変化を明らかにする予定である.
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