研究概要 |
本研究は,近年深刻化しつつある電力系統の高調波の問題の対策として,周囲の機器との協調性に優れ,適用が容易で経済性の高い新方式の高調波補償装置(アクティブフィルタ,以下AF)を開発することを目的として実施した。本方式では,各高調波に同調する複数のLCフィルタを1個のディジタルシグナルプロセッサ(DSP)を用いて実時間ディジタルシミュレーションし,その演算結果を電流追従形のインバータの電流指令値として,等価的にLCフィルタを実現する点に特徴がある。また,等価的に実現するLCフィルタの定数を運転状態で変更できるため,系統の状態に応じて補償能力や補償特性が調整可能であるなど,配電系統用AFとして優れた特性が期待できる。本研究では,この新方式AFに関して,基礎的な動作特性の解明,設計や制御プログラム作成のための指針の確立,定数の自動適応機能を付与し配電系統に分散配置した場合の挙動,などを明らかにし,配電系統に適したAFの一方式を確立する。本年度は,試作装置の製作と基本動作のシミュレーションおよび実験による検証を中心に研究を進めたもので,得られた主な成果は以下の通りである。 1.購入したパーソナルコンピュータと汎用解析プラグラムを用いて,本方式のAFの基本的な動作と有効性をシミュレーションにより検証した。 2.DSPにより等価的に実現した第5、7次高調波の各同調フィルタの電流値に応じて、各同調フィルタの定数を自動調整する制御系の実現方法を明らかにした。 3.提案するAFの実験回路を、実験に手頃な5kVAの容量で試作した。主回路にはIGBTを用い、制御回路には購入したDSP開発システムを用いた。 4.ダイオードブリッジ整流回路の発生する高調波電流を試作装置で補償する場合について、基本的な動作を確認する。 5.試作装置による実験とコンピュータシミュレーションにより制御系の定数と補償特性の関係を明らかにした。 以上により,本方式のAFの基礎的特性が解明されるとともに,設計指針の確立につながる指針が得られたものと考えている。これらの成果は,次年度で予定している系統内での動作の検討の基礎となり得るものである。
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