串形系統の両端を接続してループ状系統にすることによる安定度(定態安定度)の変化のシミュレーション結果を実験的に確認するとともに、極めて多数の発電機群からなるさらに複雑なループ構成の電力系統の定態安定度を解析することを目的として、2年間にわたって実験的な研究を行った。得られた成果ならびに今後の課題は以下の通りである。 1. 模擬実験装置を用いた実験の結果:超小型交流発電機、はずみ車、直流モータを直結した電源模擬装置(マイクロマシンセット)、ならびに、送電線(配電線)を模擬するインダクタを製作し、必要な数のマイクロマシンセットを送電線模擬インダクタを介して連系して串型系統、ループ状系統を構成した。3機系統、4機系統、5機系統のそれぞれについて、串形の系統構成とループ状の系統構成で、負荷を増加して定態安定限界を測定した結果、いずれの系統においてもループ状系統の方が定態安定度がよいというシミュレーションの結果が実験的に確認できた。 2. ループを含むさらに複雑な系統のシミュレーション結果:ルーブ状の系統構成からさらに進めて、ループ状系統が両端を他系統と連系された系統(こま形系統)や、ループ状系統が途中の数カ所で接続された形の系統(はしご形系統)について、固有値計算によって定態安定度の解析を行った。連系線インピーダンスを変化させることによって、このような構成の電力系統は串型系統やループ状系統の性質を共有していることが明らかになった。 3. 今後の課題:本研究では分散型電源として同期発電機のみを考えたが、現実は、直流電源の出力をインバータで交流に変換して交流電力系統に接続するタイプの分散型電源も多数存在する。これらも考慮した解析が今後必要である。
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