| 研究概要 |
本研究の目的はEMCの中でも商用交流系統を介して他の電子機器の妨害となる高調波電流の発生を低減する手法について回路とシステムの両面から検討することである.
本年度は,初めに新しいハイブリッド・パラレル方式PFC回路を提案し,その基本特性を解析と実験により明らかにした.提案回路は従来のコンデンサ入力平滑回路を有するDC-DCコンバータと並列に電流不連続モードのPFC回路を接続した構成であり,主スイッチを共用する.一般にコンデンサ入力平滑回路は商用電源電圧のピーク時に電流がパルス状に流れるため高調波電流を発生させ力率を低下させるが,この回路方式では他方のPFC回路との電力バランスを適度に設定することにより高調波電流を抑制し,高調波規制に適合した電流波形を得ることが出来る.また,従来のワンコンバータ方式では出力電圧リプルの低減が課題であったが,本方式では共有スイッチを制御することにより理論上出力電圧リプルを従来のワンコンバータ方式より低減できることが分かった.
次に,PFCコンバータの出力電力の大容量化を目的にPFCコンバータを並列接続した並列システムを構成し,DC-DCコンバータの並列システムにおいて利用されている電流バランス制御回路がPFC回路でも適用可能であるかどうかを調査した.PFCモジュールには汎用的なピーク電流制御方式昇圧形コンバータを用い,電流バランス制御にはモジュール電流の平均値を用いる平均値電流制御を行った.その結果,PFC並列システムにおいても電流バランス制御は有効であることが分かった.具体的には,バランス制御信号の重畳方法は電流基準信号に重畳した方が安定性や応答性の面で有効であることや,電圧帰還回路の応答速度の適切な設定により,電流バランス制御が並列システム全体に及ぼす入力力率低下の影響を低減できること等が明らかとなった.
|
