電力システムのモデリング手法として、ニューラルネットワークの適用を提案している。提案するモデルは三層構造のニューラルネットワークにより構成されており、出力層ノードより入力層ノードへ遅延回路を経由してフィードバックを持たせている。このニューラルネットワークにより、非線形差分方程式で表現可能なシステムのモデル化が可能となる。また、遅延回路数の変更によりモデルの次数の変更が可能であるため、対象となるシステムに応じてより正確なモデリングができるといえる。本研究では、モデル化の対象として、系統負荷、ガバナ・タービンシステムおよび系統幹線での有効電力と系統電圧の関係を示す動特性を考えている。系統負荷のモデリングでは、有効電力、無効電力、電圧の実測データを用いてその動特性をニューラルネットワークによりモデル化しており、そのロバスト性に関する検証を行っている。結果として、同一地域、同一季節での負荷の動特性はある特定のモデルで表現可能であることを明らかにした。ガバナ・タービンシステムのモデル化では、火力発電所におけるガバナ試験結果を用いて、特に蒸気バルブサーボシステムとタービンシステムをニューラルネットワークによりモデル化し、このモデルを用いたシミュレーション結果と実試験結果との比較検討により提案するモデリング手法の有効性を明らかにした。さらに、系統幹線における有効電力と系統電圧の動特性についても、このニューラルネットワークによりモデル化し、実測データを用いたシミュレーションによりその有効性を明らかにするとともに、本モデルを用いた系統安定度評価の可能性を示した。
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