本年度の研究実施計画に沿ってふたつのテーマに関する研究をすすめ、次の成果が得られた。 1 多機電力システムの例としてNew England 10機39母線モデル系統を取り扱い、故障点がひとつの場合の安定性解析および非線形分散制御について検討した。まず発電機の電気的出力と発電機母線から故障点までの電気的距離(インピーダンス)を考慮して、分散制御する発電機の順番(分散順序)を決定し、そして1番目機の発電機において分散システムを同定し、平衡点制御の考え方に基づいて分散システムの不安定平衡点を安定平衡点から遠ざけるようにリミッタも考慮してAVRの補助制御入力uaを決める。そしてuaを加えた状態でもう一度分散システムを同定し、モデル方程式を構成する。さらに分散システムをファジィシステムに書き換えてP-領域法により安定性解析を行い、分散システムの安定性が保証されるようにGOVの補助制御入力ugを決定する。そしてuaおよびugを加え、同じ故障を発生させ、次の発電機について同じステップを繰り返すことにより、非線形分散制御の有効性を検証することができた。 2 さらに提案手法を改良するために、分散制御の基本となる1機無限大母線モデル系統を再検討した。その中で、特に動揺の第1・2波を抑えるために、励磁電圧が積極的にAVRリミッタにかかるようにuaを改良した。そして系統にuaを加えてリミッタの影響を考慮した場合の動揺データによりシステム同定を行い、得られた係数パラメータの推定値による安定性解析に基づいてugを決定する。改良したuaにより位相角および角速度の急変に対応できる高いAVR効果が現れる結果が得られた。 次年度では、この改良型uaによる多機電力システムの非線形分散制御を検討したい。
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