研究概要 |
本研究の目的は,船舶内の電気設備用電源として一般に用いられている,軸発電システムの定常並びに過渡特性を表す理論式を導出し,これを基に系の動作特性を理論的に解明することにより,高性能な軸発電システムの実現を目指すことにあった。軸発電システムの負荷は誘導電動機が多いことから,本年度は,これまでに得られた誘導性の負荷を対象とした種々の研究成果を基に,誘導電動機を負荷とした場合の軸発電システムの動作特性を検討した。まず,誘導電動機の巨視的な過渡現象を把握するため,L形等価回路に基づく簡易な過渡モデルを考案し,これを全電圧始動時の過渡応答の計算に適用して,一次電流や速度などの応答の検討には十分適用できることを明らかにした。次いで,導出した誘導電動機過渡モデルを,軸発電システムの過渡特性解析シミュレーションブロック図に組み込んだ過渡解析モデルを新たに構築した。検討の結果,誘導電動機を負荷に持つ軸発電システムの系は6次の非線形系で表せることが判明した。このシミュレーションモデルの妥当性を検証するため,供試システムを対象に軸発電システムに誘導電動機を接続・始動した場合の,システム各部の過渡応答特性の実測地とシミュレーション値との比較検討を行った。その結果,理論の妥当であることが確認できた。さらに,ここで導出した理論の基本的な応用として,同期調相機及び誘導電動機それぞれの慣性モーメント(単位慣性定数)の,システム各部の過渡応答に及ぼす影響を調べた。その結果,調相機の慣性モーメントが大きいほど出力電圧や直流側電流の過渡的な変化が大きくなること,また,誘導電動機の慣性モーメントが大きいほど応答の収束時間が長くなることなどが明らかになった。これらの研究成果は,軸発電システムの出力電圧や出力周波数の変動を抑制するための制御系のパラメータ設計その他に役立てることができる。
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