研究概要 |
本研究課題では,同期モータの回転子側に複数個の永久磁石を採用した新たな二次構成を提案し,数値解析と実験による詳細な検討をおこなうことで,提案構成の有効性を確認するとともにその実用化を図ることを目的としている。回転子側に複数個の磁石を採用した理由は,それらの適切な配置によって特定の高次空間高調波の削減を図ると同時に,各磁石間に同期モータとして有用な制動導体を設けるスペースが確保できるからである。実機の解析に際しては,既存の有限要素法に加えて我々が過去十数年近くにわたって研究開発を続けてきた有限要素・境界要素併用法を適用しており,また解析結果の信頼性は試作機を用いた特性実験により確かめる。本年度の研究においては,初年度のリニア型でその有効性の確認をおこなった二次構成を回転実機へ適用することで,初年度に問題となった一次固定子と二次走行子間の吸引力の相殺を図る。また,空隙長を狭めることによってリニア型では微弱であった誘導作用による自己始動や制動効果の増大を達成する。得られた結果を以下に示す。 1. 初年度に導いた提案二次構成の有効性を回転構造で再確認するとともに,製作の容易性や経済性などを考慮して四分割型が適当であることを示した。 2. 解析手法に回路方程式と運動方程式を連成することで,解析精度を高めることができた。特に,制動導体による過渡特性を調べることで,誘導推力が導体の全体量に依存することを指摘した。 3. 始動時に二段階の周波数を供給することで,負荷の状態に応じた滑らかな同期化制御を実現し,今後の運転目標に向けた新たな方針を立てることができた。 以上,初年度に引き続き,本年度にも予定通りに研究を進めることができた。
|