これまでの研究において、スライドガラス基板上に蒸着した錫蒸着膜がSF6分解ガス(種々の分解ガスをひとまとめにしてSF6分解ガスと言う。)と反応して削り取られ膜厚が薄くなり、透過率が増加することを明らかにした。さらに、市販の透過型リニア光電センサとを組み合わせて約80Åの蒸着膜厚によって、SF6分解ガスの発生を1.5〜2時間で検出でき、この検出時間のばらつきの幅を少なくすることが課題となっている。約80Åの蒸着膜厚を再現性良く作製するには多くの時間がかかるので、実験計画を変更して、蒸着膜の電気抵抗変化の測定から実験を始めた。試料はスライドガラス基板上に幅20mm、長さ35mm、500Å〜350Åの厚さに錫を蒸着し、電極リ-ド線は直径0.05mmの銀線を銀ペイントによって20mmの間隔に付けた。電気抵抗の測定には四端子法を測定原理にした抵抗計(日置社製、ミリオームハイテスタ)を用い、最初に錫蒸着膜厚と電気抵抗の関係を測定した。膜厚が300Åぐらいに薄くなると抵抗値は非常にばらつき、抵抗値も高くなり、導電性が無くなる試料もあった。また、それ以上の膜厚においても電気抵抗値にばらつきが生じ、ばらつきを少なくする蒸着条件を決定するのにかなりの時間を要した。現段階でもこのばらつきの問題が少し残っている。作製した試料を放電容器に設置し、10^<-2>Torrの真空中に6時間放置し、SF6ガスを1.2Kg/cm^2に充填し、その中に20時間放置し電気抵抗値に変化が無いのを確認し、その後、A.C.コロナ放電(放電の程度約80pc)を開始し、放電時間の経過に対する電気抵抗値の変化を測定した。現在の研究状況では、膜厚、放電エネルギーをパラメータにした電気抵抗値の変化の結果が得られていないが、膜厚約300Å近傍の試料において放電開始後、約3時間でSF6分解ガスの検出ができることが明らかとなった。
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