送電系統の問題の1つである二次アークは未だ未解明な点が多い。本研究では小規模であるが種々のパラメータ(例えば、二次アーク電流の大きさ、位相差、二次アーク発生前の故障アーク電流の大きさ、位相差およびその持続時間等)を容易に変えることができる模擬アーク発生装置を開発した。開発した模擬アーク発生装置は電源部、一次、二次アーク発生のための制御部、アーク発生部の3つの主要部から構成されている。特に本装置は一次、二次アークが電源電圧の任意の位相で発生できるように電源回路と同期した制御回路を導入し、耐ノイズ性をも考慮した高速動作の電磁接触器をタイマー制御して各種コンデンサ、コイル、抵抗回路を瞬時に変えて必要とする大きさ、位相差を持つ二次アーク電流を発生させるようにした。さらに本模擬アーク発生装置と併せ、ビデオカメラによりアーク放電路の画像データを記録、一次、二次アークの電圧、電流等をA/D変換し、コンピュータによるデータ解析を行うようにした。これにより、二次アーク電流の大きさ、電源電圧との位相差、二次アーク発生前の一次アーク電流の大きさ、位相差およびその持続時間等を変えた場合の消弧に至るまでの二次アークの電圧-電流特性、アーク持続時間との関係を求めることが可能となった。また、作製した模擬アーク発生装置を用いて本年度得られた主な実験結果は次の通りである。1.遮断器の投入位相によって二次アークの持続時間がどのように影響されるかを調べた。その結果、3サイクル程度の遮断時では電源の投入位相によって二次アークの持続時間は殆ど影響されないことが判った。2.一次アーク電流の大きさが大きくなるほど、二次アーク電流の持続時間は短くなる傾向がみられる。一方、二次アーク電流が大きくなるほど、二次アーク電流の持続時間は長くなる傾向を示した。
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