研究概要 |
本年度はサンプルの作成法の改善に重点をおいて研究を行った。 1.IIIVヘテロ構造サンプルの作成 MBE装置で,井戸層がInGaAs,障壁層がInGaAlAsから成る歪み格子多重量子井戸(MQW)の成長条件の最適化を図った。井戸層の圧縮歪みを障壁層の伸張歪みで補償しながら厚いMQWを成長させるためにはMBE材料のフラックスを成膜の間一定に保つことが重要で,このための条件の探索を行った。80〜150周期に及ぶ歪み格子MQWの成長を行い,歪み緩和がないことを確認することができた。X線回折や分光透過特性による評価を行い,MQWの厚膜化による欠陥が生じていないことも確認した。 2.共振型構造の設計・作成 共振型構造とすることで,シングルパスにおける小さな作用を,波長帯域を大きく損なわずに増幅させることができる。設計に基づいて,ミラーの構成方法の最適化を図った。 (1)DBR(分布ブラッグ反射型)ミラーを用いるもの 連続してエピタキシャル成長ができるという利点があるが,従来は,基板側の厚いミラーのために,厚いMQWを成長させた時に歪み緩和が起きやすいという欠点があった。本年度は,より屈折率の大きいInGaAlAsをDBRミラーの構成材料とすることでトータルの厚さを従来の80%程度にすることができ,歪み緩和のないサンプルを成長させることができた。 (1)InP基板を除去してミラーとするもの InP基板を除去することで,構造を簡単にし,厚膜化プロセスにおける欠陥を低減することができる。これに必要なInP基板の選択エッチングの条件をほぼ確立することができた。
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