本研究では複写機、レーザプリンタの電子写真プロセスにおける現像にあらかじめ電荷を付与したトナーを使用することを試みる。そのため、はじめにトナー摩擦帯電、コロナ帯電、電子線照射により電荷を付与し、トナーの電荷保持挙動を検討した。その結果、摩擦帯電によりトナーに電荷を付与した場合が最も長く電荷が保持されることがわかった。具体的には、通常の非磁性トナーで抵抗率が10^<12>Ωcm程度より高い場合は、数日後にも最初に付与した電荷の50%以上が保存されていることを確認した。しかし、コロナ帯電によりトナーに電荷を付与した場合は摩擦帯電のときより電荷の減衰は若干速く、電子線照射の場合はさらに速いことがわかった。 トナーの電荷保持能力を高めるため、トナーにプラズマ処理を施した。その結果、ふっ素プラズマ処理を施すとトナーの電荷減衰の時定数は大きく増加することを見出した。また、ふっ素プラズマ処理はトナーの摩擦帯電特性を負側にシフトさせることもわかった。逆に、アルゴンプラズマ処理はトナーの電荷保持能力を減少させ、摩擦帯電特性を正側にシフトさせる。ふっ素プラズマ処理アルゴンプラズマ処理に伴うトナーの表面化学組成の変化をXPSによってしらべ、摩擦帯電性の変化の原因を考察した。 ふっ素プラズマ処理はトナーの電荷保持能力を増加させるが、トナーの熱的安定性も増加させることがわかった。熱的安定性の増加はトナーの保存性を増すことにつながるが、定着性に問題を生じることになる。トナーの電荷保持性と定着性の両立が今後の課題の一つである。
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