本研究では複写機、レーザプリンタの電子写真プロセスにおける現像にあらかじめ電荷を付与したトナーを使用することを試みた。はじめにトナーに摩擦帯電、コロナ帯電、電子線照射により電荷を付与し、トナーの電荷保持挙動を検討した。その結果、摩擦帯電によりトナーに電荷を付与した場合が最も長く電荷が保持されることがわかった。さらに、トナーの電荷保持能力を高めるため、トナーにプラズマ処理を施した。その結果、ふっ素プラズマ処理を施すとトナーの電荷減衰の時定数は大きく増加することを見出した。また、ふっ素プラズマ処理はトナーの摩擦帯電特惟を負側にシフトさせることもわかった。逆に、アルゴンプラズマ処理はトナーの電荷保持能力を減少させ、摩擦帯電持性を正側にシフトさせる。ただし、ふっ素プラズマ処理はトナーの定着性を低下させる。 トナーの電荷保持機構を解明するため、熱刺激表面電位減衰(TSCD)の測定を行いトナーに付与されてトラップされている電荷の散逸のメカニズムをしらべた。ポリマーを試料にしてTSCDの測定を行った結果、たとえばポリプロピレンの帯電に関与するトラップの深さは、正コロナ帯電のとき0.99eV、負コロナ帯電のとき1.2eV、摩擦帯電(正)のとき0.91eVと求められた。これらの値は十分に大きく、トナーの電荷保持能力が高いこととつじつまがあうことを確認した。つぎに、トナーの帯電における電荷制御剤(CCA)の役割をしらべるため、CCAを含むポリマーの熱刺激電流(TSC)を測定し、ポリマーとCCAの界面にトラッピングサイトが存在することを見出した。 最後に、帯電したトナーのハンドリングに伴う電荷の変化を検討した。その結果、トナーの電荷量は攪拌、搬送などにより変化することが判明した。この点は今後の課題となる。
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