透明導電膜(TCO)は、アモルファスシリコン(a-Si)太陽電池の変換効率を向上する上で非常に重要な役割を果たしている。これまでa-Si太陽電池の透明導電膜としては、化学気相堆積法(CVD)により作製したSnO_2が用いられてきた。しかしながらその製膜温度は約600℃と高く、また水素プラズマによる膜特性の劣化があり、これらがSnO_2の太陽電池への応用を制限してきた。 そこで本研究は、プラズマ耐性が高く、また150℃程度の低温度において形成が可能であるなど優れた特徴を有するZnO膜に着目し、均一で低抵抗なZnO膜を得るために新しく原子層成長法(ALD)による製膜を提案し、その成長条件を明らかにした。その結果、ALD法で作製した膜は従来の有機金属化学気相堆積法(MOCVD)で作製した膜より導電率及ぴ透過率が高く、また面内均一性に優れていることが明らかとなった。 成長時の原料ガスにはジエルチル亜鉛(DEZn)およびH_2Oを、キヤリアガスにはアルゴン(Ar)を用いた。これらの原料ガスを交互供給することにより、Corning7059ガラス基板上にZnOの製膜を行った。その結果、膜の成長速度は基板温度105℃から165℃まで変化せず、1サイクルあたりの平均膜厚がZnO(100)の面間隔とほぼ等しくなり、ALD法による成長の自己停止機構を初めて確認した。更に、得られた膜の電気的特性を評価したところ、従来のMOCVD法で作製したZnO膜より移動度が高く、均一性に優れていることが明らかとなった。 次に、導電性が高いZnO膜を得るために、H_2希釈B_2H_6を用いてボロンドービングを行った。その結果、膜厚400nmにおいて抵抗率5x10^<-4>Ωcm、シート抵抗12Ωの低抵抗なZnO膜の作製に成功した。この値は、MOCVD法による作製した厚さが同程度のZnO膜より1桁以上低い値である。
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