本研究では、プラズマ耐性が高く、また150℃程度の低温度において形成が可能であるなど優れた特徴を有するZnO膜に着目し、均一で低抵抗なZnO膜を得るために新しく原子層成長法(ALD)による製膜を提案し、その成長条件を明らかにした。その結果、ALD法で作製した膜は従来の有機金属化学気相堆積法(MOCVD)で作製した膜より導電率及ぴ透過率が高く、また面内均一性に優れていることが明らかとなった。 次に、導電性が高いZnO膜を得るために、H_2希釈B_2H_6を用いてボロンドービングを行った。その結果、膜厚400nmにおいて抵抗率5x10^<-4>Ωcm、シート抵抗12Ωの低抵抗ZnO膜の作製に成功した。この値は、MOCVD法による作製した厚さが同程度のZnO膜より1桁以上低い。 さらに、得られた低抵抗ZnO膜の安定性について検討を行った。スパッタ法あるいはMOCVD法などにより作製したZnO薄膜は、熱アニール等に対して不安定であることが知られている。そこで、ALD-ZnO膜が同様な不安定性を有するかどうかについて検討を加えた。その結果、ALD法で作製したZnO膜は長期間大気中に放置したい場合でも、安定であることが明らかとなった。特に、n型ドーピングを行った膜においては、放置から2年間が経過しても、抵抗率はほとんど変化せず、非常に良好な安定性を示すことが明らかとなった。また、MOCVD法により作製した膜の抵抗率の変化は、電子移動度の低下が主であることが明らかとなった。 さらに、MOCVD法により凹凸構造を有するZnO薄膜を作製し、その表面を安定性に優れるALD-ZnO膜を用いて被覆する二段階成長法を新たに提案した。この手法を用いることにより、安定性に優れた低抵抗かつ凹凸構造を有するZnO薄膜を作製することに成功した。最後に、得られた均一・低抵抗ZnO膜をa-Si太陽電池の透明導電膜へと応用した。その結果、p層成長時の条件等を最適化することにより、安定化効率8.2%のa-Si太陽電池を実現した。
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