研究概要 |
平成9年度は,同位体酸素(^<18>O_2)ガスを用いてPZT薄膜を作製し,膜に含まれる酸素の質量をSIMSを用いて調べた.酸素ガス流量2.1%と14%の2種類のPZT膜を作製し比較した.2.1%の場合Zr-Tiターゲット表面は酸化せず,金属原子がスパッタされ基板表面へ供給され(金属モード),14%の場合酸化が起こり(酸化物モード)金属酸化物が供給されることになる.この実験の結果,金属モードでPZT薄膜を作製すると,膜中酸素のうち90%はPbOからきた酸素であり,残り10%が流した酸素ガスからきたものであることが判明した.従って,この場合PbOが主要な酸素源ということになる.ここで酸素の輸送のされ方には2通りあると考えられる.すなわち,PbOがスパッタされるときに,PbとOに分離して原子状酸素の形で供給される場合と,PbO分子でスパッタされ基板に到達し,PbOはTiおよびZr金属に還元され,Pbは蒸発するという2通りが考えられる.現状ではこの過程のどちらであるかは分かっていない.今後解明すべき課題である. 一方酸化物モードの場,合PbOから供給される酸素は30%であり,流した酸素ガスが主要な酸素源であった.酸化したターゲット表面からTiO_2やZrO_2の形で基板表面に供給され膜形成が起こっていると考えられる.以上のように,スパッタリングのモードの違いにより酸素の起源が異なることが明らかとなった.さらに,この酸素の起源の違いは,結晶性の違いにも影響を与えていると考えられる.この現象は新しい酸素の供給法に応用できると期待される.
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