研究概要 |
平成10年度は、本研究で提案している準金属モードというこれまでにない新しいスパッタ堆積モードによるPb(Zr,Ti)O3(PZT)薄膜の成長機構についてさらに詳しく調べた。まず、どのような条件のときペロブスカイト型の結晶構造が現れるであろうかということを探った。それによると、一つの重要な帰結として、Pbが過剰に供給される必要があるという事実が浮かび上がった。通常Pbは蒸気圧が高く、成長膜表面から蒸発しやすいので過剰に供給する必要があるというのが一般的な理解である。ところが、PbのZr+Tiに対する比率の定量的検討を行ったところその比率が3以上のときペロブスカイト構造になりやすいことが判明した。この結果に対次のような見解を持つことができる。すなわちPZTの化学量論比を考えるとPbはZr+Tiの量に対し等量であればよいが、Oに着目するとそれは3倍の量が必要となる。従って、丁度化学量論比を満足するようにPbOからOが供給されたときペロブスカイト構造が生じた。さらに、この結果は、昨年度行った同位体酸素を用いたPZT膜中の酸素の起源の結果とよく符合している。 最後に本研究では、得られた結果を基に、準金属モードスパッタ堆積におけるターゲットの設計指針を与えている。
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