本研究は、GaNなどの窒化物半導体について、その電気化学的挙動を明らかにすることによって、表面研磨技術、加工技術、あるいは欠陥検出技術などとしての電気化学的エッチング技術開発の可能性を追求することを目的としている。本年度は、研究の最終年度としてGaNの電気化学的挙動の特徴をまとめるとともに、電気化学的エッチングが、転位検出技術をはじめとするGaN結晶の有力な評価法になることを明らかにした。 1.GaNの電気化学的挙動の特徴: 基本的にはGaAsなどの半導体と類似の電気化学的挙動を示すが、通常得られるGaN薄膜結晶には電気的特性や欠陥密度に関する顕著な不均一性が存在し、さらにナノパイプなどの巨大欠陥の存在のために、電気化学的特性の再現性に欠けるという特徴がある。また、これらのことが不動態化の発生などといった誤った解釈をもたらす原因となっている。 2.GaN結晶の不均一性と電気化学的挙動: 電気的特性や欠陥の存在と電気化学的挙動との相関を明確にすることによって、GaN結晶の各種不均一性を評価することが可能である。このことは、逆に、不均一性を有する結晶を電気化学的に均一に溶解させることが困難であることを意味し、表面研磨法としてのエッチング技術の確立は困難であることを示している。 3.n形GaNの光電気化学エッチング挙動と欠陥(転位)検出: NaOH溶液とHe-Cdレーザー(波長325nm)を用いたn形GaN膜の光電気化学エッチングにおいて、多数の針状部分が溶解されずに残存することを明らかにした(針状ヒロックの形成)。この針状残留物はその形状および密度(10^8〜10^<10>cm^<-2>)から、基板界面から膜表面にほぼ垂直に伸びた転位であると考えるのが妥当である。この方法による転位検出は、透過形電子顕微鏡や高温化学エッチングなどの従来の方法に比べて極めて簡便であり、今後の発展が大いに期待される。
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