研究概要 |
Bi系酸化物超伝導体Bi_2Sr_2Ca_<n-1>Cu_nO_χ(BSCCO)は100Kを超える臨界温度を示す相も存在することから実用上非常に重要な材料である。その応用として,超伝導アンテナや超伝導フィルタ,あるいは固有接合による発振器やインターフェースなどが考えられる。アンテナやフィルタでは超伝導体の高臨界電流密度化を図る必要があるのに対し,固有接合の場合には臨界電流密度の小さい材料が要求されるとともに,臨界電流密度の制御も必要となる。したがって,BSCCO薄膜の臨界電流密度を広い範囲で制御することが実用上不可欠である。本研究ではBi系酸化物超伝導体薄膜の超伝導フィルタ,固有接合などへの応用を目指して,BSCCO薄膜の臨界電流密度制御法について検討するとともに,臨界電流密度と他の諸物性との関係などからこの材料の伝導機構に関する知見を得ることを目的とした。本年度は主にc軸方向の特性を検討した。得られた知見を以下に述べる。 1.作製・加工プロセス,試料形状の検討:c軸方向の電流密度を測定するためのメサの加工について,測定上問題となる点について検討した。粒塊が小さいと材料の特性を正しく評価できないため,粒径拡大のための熱処理条件を検討し,メサと同程度にまで粒径を拡大することができた。また,上下電極間の短絡を防ぐ試料形状および加工法を検討した。 酸素量制御等による臨界電流密度の変化についての検討:製膜後の窒素中熱処理によりBSCCOの酸素量制御を行い,これによる臨界電流密度の変化を検討した。c軸方向では窒素中熱処理により臨界電流密度は減少し,10^4〜10^1A/cm^2の範囲で変化した。また,熱処理時間とともにc軸方向の臨界温度は急激に上昇した後しだいに減少し,73〜85Kの範囲で変化した。これらはキャリア量変化に伴うものであることが示唆された。
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