研究概要 |
Bi系酸化物超伝導体Bi_2Sr_2Ca_<n-1>Cu_nO_x(BSCCO)の応用に際して要求される臨界電流密度はその応用により異なる。したがって,臨界電流密度の広い範囲での制御が実用上不可欠である。本研究では2212相(n=2)を用いて熱処理によるBSCCO高品質薄膜の臨界電流密度制御法および臨界電流密度と他の諸物性との関係等について検討した。 1. 熱処理による臨界電流密度制御法:c軸方向の臨界電流密度を測定する際に粒塊が小さいと材料の特性を正しく評価できないため,高温・酸素中での熱処理条件を検討し,メサと同程度にまで粒径を拡大することができた。その後の低温・窒素中での熱処理によりBSCCOの酸素含有量制御を行ったところ,熱処理時間とともにc軸方向の臨界電流密度は大きく減少し,10^4〜10^1A/cm^2の範囲で変化した。また,熱処理時間とともに臨界温度は急激に上昇した後しだいに減少し,73〜85Kの範囲で変化した。これらはキャリア量変化に伴うものであることが示唆された。 2. 臨界電流密度と他の物性との関係:ab軸方向の臨界電流密度と表面抵抗との関係について主に検討した。表面抵抗は,Y系超伝導体で報告されているような粒径と臨界電流密度の積に対する依存性は見られなかったが,臨界電流密度によって整理される可能性が示唆された。 3. 臨界電流密度制御法の応用可能性:臨界密度制御法の応用として,固有接合を作製し,その臨界電流密度とデバイス特性との関係を検討した。その結果,電流-電圧特性がフラックスフロー型のものから固有接合特有の電圧のとびとヒステリシスの見られる分枝構造を持つものまで得ることができた。また,分枝構造を持つ電流-電圧特性が見られるものは臨界電流密度が約10^3A/cm^2以下のものであることがわかった。
|