研究概要 |
光局在効果による磁気光学効果の巨大エンハンスメントについて研究計画書に基づき以下の研究を行なった. (1) 光局在効果による磁気光学効果の巨大エンハンスメント機構 厳密な理論計算を行ない,光局在に伴う磁気光学効果のエンハンスメントが,磁性体中の固有モード光である左右の円偏波光の局在波長がわずかに異なることに起因することを見出した.またこの数値計算結果は、モード結合理論によって解析的に記述可能であることを見出した。この知見に基づき,最も強い光局在状態が生じる多層膜構造を探査し,マイクロキャビティ構造で最も強い光局在が生じること,またその多層膜で著しく大きな磁気光学効果が発現することを見出した.また光局在化現象が1次元フォトニック結晶と密接に関係することを示し、局在モードの発生機構、磁気光学効果との関連を解明した。 (2) Co、アモルファスTbFe、希土類鉄ガーネット薄膜を用いた磁気光学マイクロキャビティの作製と特性 上記(1)の知見に基づき,(SiO_2/SiN)^k/Co/(SiN/SiO_2)^k構造の多層膜、(SiO_2SiN)^k/a-TbFe/(SiN/SiO_2)^k構造の多層膜、及び(SiO_2/Ta_2O_5)^k/Bi:DyIG/(Ta_2O_5/SiO_2)構造の多層膜をスパッタ法で形成し,光学及び磁気光学特性を調べた.その結果,これらの多層膜は上記(1)の解析結果に定量的によく一致する光学・磁気光学特性を示すことを見出し、(1)の理論解析結果の実験的検証に成功した。特に強い光局在状態を実現することにより、磁気光学ファラデー効果、磁気光学カー効果とも一般的な磁性単層膜の100倍に達する極めて大きな増大効果を示し、種々の磁気光学デバイスへの応用上魅力ある媒体が構築できることを示した。 (3) 磁性フォトニック結晶 本研究により詳細に調べた多層膜は、スピン方位依存性をもつ1次元フォトニック結晶(1次元磁性フォトニック結晶)であるとの結論を得、この観点から誘電体を用いたフォトニック結晶との関係を調べた。その結果、規則構造をもつ磁性フォトニック結晶中、及びグラニュラー構造をもつ不規則構造磁性フォトニック結晶で、光局在効果を利用することで磁気光学効果の増大が生じることを結論した。この知見は、本研究で着目した多層膜という1次元構造から、2次元、3次元構造を有する磁性フォトニック結晶の存在と、その特性に強い興味を抱かせ、今後高次元構造を有する磁性フォトニック結晶の特性解明が重要な研究課題になるとの知見を得た。
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