研究概要 |
本年度は,2年計画の本研究課題の1年目であり,in situで積層膜の連続作製が可能な新しいレーザーアブレーション装置の作製と,それによる積層膜の作製手法の確立に力点を置く計画であった.新しいレーザーアブレーション装置の設計を7月までに終え,製作にとりかかったが,予想以上に時間がかかり,計画の変更を余儀なくされた.本年度の成果を以下に列挙する. 1.すでに得られているDCスパッタリング法によって作製したYBaCuO薄膜と,焼結法によって得られたバルク試料について,超音波励起磁束フロー起電力を測定し,熱励起型の磁束フローモデルによって解析を行った.その結果,バルク試料の場合はそのモデルでほぼ説明できるのに対し,薄膜試料では低磁場になるに従って,理論値からのずれを生じることがわかった.そのずれに対する考察を行い,積層膜にした場合の磁束フロー起電力測定の問題点を指摘した.この研究成果は現在投稿準備中である. 2.磁束に対する熱励起の影響が最も顕著に現れるBiSrCaCuO超伝導体の単結晶薄膜の作製条件の最適化を行った.SrTiO3単結晶基板上にバッファ層を挿入することによって,転移幅の狭い良質な薄膜の作製に成功した.この研究成果についても,現在投稿準備中である. 3.現有のレーザーアブレーション装置で圧電体単層膜作製の予備実験を行った.薄膜作製時の酸素圧とアニール条件を変化させることにより,結晶構造等がどのように変化するかを調べた.
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