研究概要 |
強誘電体薄膜メモリの低電圧駆動化や高集積化に伴うセルサイズの縮小を考える場合には、強誘電体薄膜の膜厚やグレインサイズがその物性や電気的特性、メモリ特性に及ぼす影響(サイズ効果)を調べる必要がある。そこで本研究では、MOCVD(metalorganic chemical vapor deposition)法により作製したPb(Zr,Ti)O_3(PZT)薄膜に関して、膜厚やグレインサイズがその電気的及びメモリ特性に及ぼす影響を詳しく調べた。 まず誘電率や自発分極、抗電界に関して、膜厚依存性(70-600nm)を調べた。膜厚が薄くなるにつれ、誘電率及び残留分極は減少するが抗電界は増加する傾向にあった。グレインサイズの膜厚依存性を調べたところ、グレインサイズは膜厚とともに変化し、膜厚が減少するにつれてグレインサイズも減少した。このことは、上記の結果は、純粋な膜厚の効果とグレインサイズの効果を共に含んでいることを意味する。 そこで次に、電気的特性のグレインサイズ依存性のみを調べるために、グレインサイズの制御を試みた。PZT膜のグレインサイズの制御は、下部Ir電極のグレインサイズの制御(膜厚による)や成長パラメータ、とりわけ成長速度の制御により120-300nmの範囲で行うことができた。同じ膜厚(約200nm)で、グレインサイズのみ120-240nmの範囲で変化させたPZT膜の電気特性を調べたところ、グレインサイズが減少するにつれ誘電率や残留分極値は減少し、抗電界やリーク電流は増加する傾向が見られた。メモリ特性で重要な分極反転疲労にもグレインサイズ依存性が見られ、グレインサイズが120nmと小さいのものは10^9回の分極反転後に疲労が観測された。 本研究において、膜厚及びグレインサイズに関するサイズ効果を明確に分離し始めて議論することができたと同時に、グレインバウンダリの重要性を示唆することができた。
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