研究概要 |
超高密度磁気記録に不可欠な高感度磁気ヘッド材料として、巨大磁気抵抗効果(GMR)を示すスピンバルブ膜や磁性人工格子が注目されている。これらの材料のGMR特性は異種原子界面の構造に敏感であり,同一の積層膜構成でも作製条件により特性が異なり、積層膜界面の微細構造が重要な要素となる。 本研究では上記の微細構造と磁気特性の解明を目指し,ナノスケール構造の作製を,1)分子動力学による薄膜形成過程のシミュレーションによる微細構造の検討と2)パラメータ変調スパッタ法によって実現することを目指すものである. 本年度は、2体間ポテンシャルと多体間ポテンシャル(EAMポテンシャル:Embedded Atom Method)を用いて微細構造形成シミュレーションを分子動力学法を用いて行い、両ポテンシャルによる相違を明らかにした。積層した原子の配置や混合の程度は、2体間ポテンシャルを用いた場合と多体間ポテンシャルを用いた場合で、同程度となったが、膜内のひずみに差が生じた。また、用いる周期境界条件の大きさによっても、積層膜の構造が変わると予想されるので、今後これらの点も含めて、積層シミュレーションをより現実的なアルゴリズムにして行く計画である。さらに、原子の入射角度分布と実際のスパッタ条件の対応を求め,原子の基板への入射角度分布を考慮したシミュレーションを進める。 また、基板に凹凸構造を形成し、スパッタによる人工格子膜の積層とその微細構造の分析を進めると共に、超高真空内で磁性原子の微少粒子自己形成の基礎検討を進めている。
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