本研究は、高度波長多重通信への適用を目標に、単一モード導波路を基礎とした従来の光デバイスと比較して、コンパクトなばかりでなく高機能性が期待できる多モード導波路もしくはマルチ導波路を利用した下記の種々の半導体光機能デバイスについて、新規デバイスの提案並びにデバイス実現に向けて解析および実験両面から基礎的な検討を行ったものである。 1) 多モード干渉型光スイッチ(MIPS)は、多モード干渉導波路中央部の屈折率変調領域などの構造最適化により、550μm程度のコンパクトな素子長で-20dB以下の優れたクロストーク特性などが得られることがわかった。実際に作製検討を行い、基本的なスイッチング特性を達成し、また、スイッチ、分配などの多機能が同一素子構造で達成できることを確認した。 2) 多モード干渉型波長変換素子(MIWC)は多モード干渉導波路を活性領域としたもので、構造上生じる活性導波路とアクセス導波路間の段差による不整を解決すべく作製プロセスの最適化を行なった。その結果、基本的な相互利得変調特性を実験的に確認し、波長変換動作実現のめどを得た。 3) 高性能狭帯域光アド・ドロップ素子は、密度変調回折格子を導入した構造において、有効利用帯域35nm以上で約-30dBの低サイドロプ特性を達成できることを理論的に明らかにした。また、斜め回折格子の導入により、偏光無依存な波長選択が可能なことを示した。 4) 光コヒーレントトランスバーサルフィルタ用として、極めてコンパクトな反射型アレー導波路を考案し、基礎的な設計によりその有効性を確認した。 5) 多モード干渉導波路集積半導体レーザは、数μmの多モード干渉導波路の装荷により-4dBという比較的低い損失の単一モードファイバとの結合特性が簡易に得られることや、また、マルチビーム化への応用も可能であることを示した。 今後、これらの成果を基礎に、実用レベルの特性を有するデバイスを実現すべく実験的検討をさらに推進する予定である。
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