研究概要 |
本年度の研究は大別して次の4テーマからなる。(1)ハード系PZTセラミックスの表面特性と分極電界依存、(2)正方晶系PZTおよびPbTiO_3系セラミックスでの結晶配向度の分極電界依存、(3)ソフト系PZTセラミックスでの誘電・圧電特性の分極電界依存、(4)高電界下での強誘電体ドメインのパルス応答特性である。 (1)ではPZTセラミック表面において研磨や分極処理により付加的な結晶配向が起こることが明らかとなった。更に、(2)の典型的な正方晶系PbTiO_3セラミックス(キュリー温度:420℃,結晶軸比:c/a=1.048)では、分極処理による付加的な結晶配向が(002)ピークのX線回折相対強度I_<002>で83%に達し、(1)の場合のPZTセラミックス(キュリー温度:320℃,c/a=1・030)のI_<002>=70%に比べ20%近く大きくなった。このことから結晶軸長さの異方性が大きい(c/aが大)程、セラミック表面がc軸配向し易いと云える。又、ハード系とソフト系PZTを比べた場合、後者の方が表面での付加的な配向が小さく、これはソフト系がセラミックスとして柔らかく、表面での歪みを内部で吸収するためと考えられた。 (1)および(3)の誘電・圧電特性の分極電界依存から、電気機械結合係数の極小になる電界(抗電界:Ec)で180°ドメインの電気的なクランピング(↑↓)が起こり、このEcで誘電率の極小、周波数定数の極大が起こることが初めて確認された。さらに、180°ドメインの180°反転(1回)および90°ドメインの90°回転(2回)の電界強度を電気機械結合係数、誘電率の分極電界依存よりシュミレーションし、求めることが出来た。 (4)ではハード系、ソフト系PZTセラミックスヘパルス印加(ラジアント製強誘電体テストシステムRT6000HVS使用)を繰り返した結果、あるパルス電界強度でパルス印加回数と共に分極量が減少し、更に印加を続けると分極量が増える現象を初めて見出した。この電界強度は(1)〜(3)のEcよりは小さく、我々はこの現象を結晶配向がドメインクランピングに至る過程を示す過渡現象と名付けた。
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