研究概要 |
今年度はPZTセラミックス中の強誘電体ドメインと外部から印加されたパルス(電界強度と周波数)との関係およびパルス分極の可能性について調べた。 測定温度80℃,印加電界3kV/mm,周期800msecのバイポーラパルスをM.P.B近傍組成試料へ印加し、P-Eヒステリシスを観測した。その結果,ソフト系ではM.P.B近傍組成において飽和したヒステリシスが得られたが、ハード系では±3kV/mmの印加でも飽和に達しなかった。次に、パルス印加による分極処理効果を検討したところ、ソフト系の圧電特性はDC分極とほとんど変わらなかったが、ハード系では電気機会結合係数(kp)がDC分極の1/3程度であった。又、観測されたヒステリシスは正電界方向へのシフトが見られた。更に、ソフト系およびハード系のM.P.B.近傍組成の未分極試料を用いて、バイポーラ三角波パルスをE=±3.0kV/mm,T=800ms、E=±4.0kV/mm,T=800ms、E=±3.0kV/mm,T=12secおよびE=±4.0kV/mm,T=12secの条件で10回印加し、圧電特性の測定を行った。又、DC分極(3kV/mm,80℃,30min)済試料を用い同様の測定を行った。ソフト系の未分極試料のパルスによる分極では、DC分極によるkpとほぼ同じ値が得られた。ハード系では未分極,分極済み試料共kpの大きさは、E=±4.0kV/mm,T=12sec>E=±3.0kV/mm,T=12sec>E=±4.0kV/mm,T=800ms>E=±3.0kV/mm,T=800msの順で、飽和分極(DC分極程度)には達していなかった。このことから、kpはEよりもTに大きく依存することが明らかとなった。一方、ソフト系およびハード系共にDC分極後の試料へのパルス印加により、kpは減少した。これは一度配向した分極が、パルス印加により180°ドメイン反転を起こすが、一部パルスに追随できず、配向分極が互いにうち消しあうドメインクランピング状態となり、kpが減少したものと考えられた。
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