(1)アルミニウムの原子層堆積装置を組み立てた。本装置は、アルミニウムの有機金属原料であるジメチルアルミニウムハイドライド(DMAH)と水素を交互に成長チャンバーに供給することができる。成長チャンバー内のガスノズルの先にはタングステンフィラメントが取り付けられ、水素導入時に点灯して原子状水素を発生させる。基板の通電により基板のみを加熱するため、熱容量が小さく短時間の温度変調が可能である。成長チャンバーの真空度は約10の-7乗Torrである。 (2)原子層堆積においては、原料ガスであるDMAHの導入時に、完全にガスが分解せず通常の連続堆積が起きない事が必要である。そこでまず、未希釈のDMAHのみを導入して、連続堆積が生じない基板温度を求めた。DMAHの圧力25mTorrで5秒間のガス導入を200サイクル行った。200℃以上では白濁しているものの明確に成膜が認められ、X線回折によりアルミニウムであることが確認された。100℃でも20オングストロームのわずかな成膜が認められたが、この膜厚は堆積速度に換算して0.1原子層/サイクル程度である。 (3)次に、DMAHと原子状水素を交互に供給して原子層堆積を試みた。DMAHの供給条件およびサイクル数は(2)と同じである。また、(2)の結果より基板温度は100℃として、原子状水素供給時間に対する成膜特性及び膜質を調べた。原子状水素の供給時間を増やすにつれて堆積膜厚は増加し、約200オングストロームで飽和する傾向を示した。この膜はアルミニウムのエッチング液にはエッチングされるが、X線回折ではアルミニウムのピークは観察されなかった。 (4)次年度は、成長条件、膜質の評価を継続するとともに、表面反応素過程を明らかにする。
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