今日、エレクトロニクスでは性能向上にも限界が見え、従来の主役である電子に加えて光がそれぞれの特徴を生かして役割分担する新しい概念のデバイス・光電子集積回路(OEIC)の開発が待たれている。しかし、これを実現する上で各構成材料であるSiとGaAsとの異種接合間には約4%の格子不整合という根本的な問題があるため結晶性が著しく劣化してしまい、実現への大きな障壁となっている。本研究では、以上の問題点を改善する為の基礎的検討として、Si基板と格子整合可能な新材料GaAs_<1-x>N_x混晶に着目し、高品質な混晶を作製できる成長技術を確立することにある。GaAs_<1-x>N_x混晶薄膜の結晶成長の検討を行った結果、この系で格子整合可能なN混晶比が20%と非常に高くなるために、格子整合領域では結晶成長中にGaNとGaAsに相分離してしまう現象が生じ、Si基板上に格字整合できる均一な20%のN混晶比を有するGaAs_<1-x>N_X混晶薄膜を作製することが極めて困難であることがわかった。また、N混晶比を5%以上にするとGaAs_<1-x>N_x混晶の結晶性が大幅に悪化してしまうことも明らかとなり、格子整合による結晶性の改善効果は期待できないことがわかった。また、Siは立方結系の結晶構造であることからGaAs_<1-x>N_xも立方晶系であることが必要であるが、Nの混晶比が5%以上になると六方晶系の結晶構造を持つGaNが混入し、GaAs_<1-x>N_x混晶の結晶性がより悪化することもわかった。今後の予定では、Si基板と格子整合可能な新材料In_<1-X>Ga_xAS_<l-Y>N_Y混晶薄膜に着目している。これはGaAs_<1-x>N_x混晶にInを添加することによって、Inの原子半径が大きくなる為、Siと格子整合させるためのNの混晶比をGaAs_<1-x>N_xの20%から数%まで低下できるものと期待される。
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