本研究では、ガスフロースパッタ法と呼ぶ独自のスパッタ法を基礎として、次世代磁気記録媒体薄膜の作製に適した成膜プロセスを開発することを目指している。具体的には、微粒子を敷き詰めたような構造(微粒子構造)の磁性薄膜を、その粒径、結晶性および粒子性を制御できるプロセスの構築し、磁性薄膜の構造制御条件を明らかにすることである。本年度の実績をまとめると次のようになる。 1.ガスフロースパッタ法における次世代記録媒体としての可能性を有したhcp単相構造Co薄膜の生成条件を明らかにした。従来のプロセスではhcp単相のCo膜は作製できず、現在唯―の方法として確立てきた。 2.Hcp単相Co膜の生成条件は成長温度を約350℃に保つことであるが、微粒子形状の構造にするためには成長温度をなるべく低く保つ必要があることを明らかにした。 3.ガラス基板上へのhcp-Co膜の堆積においては、100℃以下の成長温度の時、c軸が基板面に垂直に配向し、結晶粒子の大きさは直径が約15nm、長さが約60nmであり、c軸方向に成長することが明らかになつた。ただし、それらの結晶粒子は密に成長し、直径が20nm程度の2次的組織を形成するため、記録媒体としては適さない。目的とする粒子構造にするためには、なんらかの下地層が必要と考えられる。 4.本プロセスにおけるターゲット形状と堆積速度および堆積種の関連性を実験的に調べ、ターゲット内径が0.5cm程度から有効な動作をし、内径がlcm以下においてはクラスターの堆積が可能であることを明らかにした。さらに、このクラスター堆積により微粒子構造の薄膜が作製できることを示した。
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