本年度における研究の主目的の一つであった、磁気ランダムアクセスメモリ素子の作製については、当初の目的の通り、1ビット素子を作製し、磁気抵抗効果の特性を測定する段階までは到達した。磁性サンドイッチ構造素子を微細加工し、磁気抵抗効果を測定したところ、メモリ動作を行っていることを確認した。しかし、本来の磁気抵抗の変化比は、5%程度と予想されていたものが、微細加工後の素子では1%以下と小さいものになってしまった。これには、微細加工を施すことにより磁性膜及び電極との絶縁用のSiO膜が劣化し、電気伝導において、バイパス電流が生じたことによる有効電流の低下が原因と推測され、素子作製技術の向上が必要である。また、ここで、実現できた素子サイズは、メモリ部分が30×150μmの大きさで、実用素子を開発することから見れば非常に大きなものであった。それ以下の、より小さい素子を作製することの技術的な困難が、現有の設備・装置では生じたことから上記のサイズに留まってしまった結果となったが、本年度後半に、従来の薄膜作製と、光リソグラフィ、エッチング技術の組み合わせではなく、新規に微細磁性パターンを作製する方法の目途が立ち、現在は、そのシステムの構築を行っている。 新しい作製システムの環境が整えば、数μmサイズの素子を作製し、磁気抵抗特性を測定することが可能となることが予想され、より実際の動作に近い環境で、種々の動作特性の測定を進めることができると期待される。
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