本研究は、携帯用情報機器のディスプレイ、書換え可能な電子の紙、また、使用台数が益々膨大となるディスプレイの低消費電力化を可能にするキーデバイスとして、実用できるレベルの反射形液晶ディスプレイ(LCD)の開発を目的として行ったものである。 まず最初に、筆者らが上記の要求に適した方式として提案した位相差板補償・偏光板1枚式反射形TNLCDおよびSTNLCDの表示特性と関連パラメータの関係を数値解析法で調べ、設計条件を最適化すると、これらの方式でマイクロカラーフィルタ方式によるカラー表示の前提条件である表示の明るい、高コントラスト比の無彩色表示が得られることを明らかにした。また、実際に対角9.5インチ、ドット数640x3(RGB)x480の512色カラー反射形TFT-LCDを試作し、本方式とシミュレーションの有用性を実証した。 しかし、上記の反射形LCDはノーマリブラックモードであるため、高解像度化するとブラックマトリクスの面積割合が増加して表示が暗なる、文字表示の視認性が低下するなどの問題がある。そこで、本研究では、上記の反射形TNLCDに、ねじれ配向のフィルム(TN液晶層と同じ分子配向を有する液晶高分子フイルム)を付加することで、ノーマリホワイトモードの表示を可能にした新規の反射形TNLCDを考案し、この方式で設計条件を最適化すると、表示の明るい(反射率49%以上)、高コントラスト比(約56:1)の無彩色表示が実現できることを明らかにした。また、表示できる色数に制限はあるが、カラーフィルターを用いないことから明るい表示と低コスト化が期待できる複屈折色を用いる反射形カラーLCDに着目し、この方式の高精彩表示や加法混色による多色化に適したパネル構成として偏光板1枚式の反射形STNLCDを提案し、設計条件を最適化すると実用できるレベルのカラー表示特性が得られることを明らかにした。
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