これまで、本研究代表者等は平成9年度の研究計画・方法に従い、ミリ波帯移動体通信システムにおいて用いられるであろう高誘電率円板共振器が単独に存在する時の固有モードであるウィスパリングギャラリーモード(WGモード)の固有値の算出に携わってきた。その結果、軸方向に偏波したWGモード(WGH)の固有値方程式の誘導及び固有地の算出に成功し、電子情報通信学会に投稿したところ採録されて本年1月号に掲載された。また、半径方向に偏波したWGモード(WGE)についても同様な解析を行い固有値の算出に成功し、本学教育学部紀要に掲載が決定している。これら2つのWGモードの共振特性を比較検討したところ、同じ共振次数Nに対しWGEの方がWGHよりも低い周波数で共振することが明らかになった。また共振周波数間隔(共振次数Nが1つ増えるために必要な周波数推移)はWGEの方がより広いことも分かった。これらが本年度の理論的研究によって得られた知見の一部である。 一方、本科学研究費補助金により購入したスカラーネットワークアナライザー(追加採択のため2月に納入された)を用いた実験回路システムの構築はすでに完了している。さらに高誘電率セラミックスを用いた共振周波数およびQ値に関する実験が一部開始され本解析結果の妥等性が確認されつつある。今後、円板共振器上のWGモードの電磁界分布の正確に測定しQ値との関係を検討する必要がある。 また平成10年度の研究に向けて、この円板共振器を分布結合現象により励振したり、検出用に用いられる高誘電率を持つ方形誘電体導波路の分散特性を、近似ではあるが簡単な方法で精度良く求められることが可能となった。その結果を本年5月にポーランドで開催される国際学会('98MIKON)で発表することも決定している。
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