研究概要 |
平成9年度の研究成果を踏まえ,平成10年度は高誘電率円板共振器のウィスパリングギャラリーモード(WGモード)の共振特性を実験的に求め理論解析結果と比較検討した。またこの円板共振器を励振したり,共振エネルギーを検出するために用いられる高誘電率方形誘電体導波路の分散特性を理論的及び実験的に求めた。以下に研究実績と研究経過を述べる。 (1) 高誘電率円板共振器の共振特性について アルミナ(比誘電率は約9.7)でできた円板共振器を用いて,軸方向に偏波したWGモード(WGH)と半径方向に偏波したWGモード(WGE)の共振特性について本科学研究費補助金により購入したスカラーネットワークアナライザーを用いて実験的検討を行ない理論解析結果と比較した。その結果,WGEモードにおいては共振周波数の相対誤差は約4%程度であるが,WGHにおいては約1%程度であり,平成9年度の研究成果の妥当性が明らかになった。今年度はこの誤差の原因を明らかにすることに成功し,さらにより精度の良い解析方法を見い出しつつある。 この新しい解析法は99年4月の電子情報通信学会マイクロ波研究会で発表予定である。 (2) 高誘電率方形誘電体導波路の分散特性について 円板共振器を効率良く励振したり効率良く共振エネルギーを検出するには,この共振器の近傍に配置される方形誘電体導波路の分散特性を詳しく知らなければならない。従来の近似的な解析法では高誘電率を持つ導波路には適用できないため,今年度は全ての電磁界を用いたより精度の高い解析法を新たに提案している。この解析法は基本モードのみならず高次モードにも適用可能であり,また得られる結果は遮断状態に近い場合を除いて実験的解析に良く一致することも明らかになった。これらの成果の一部は,平成10年5月にクラコフ(ポーランド)で開催された国際学会('98MIKON)で発表され高い評価を得ている。
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