高速FH-SS/遅延検波を我々の研究室で考案したディジタル変調方式AP-QCPMを用いて実現し、これをITSの物理層として適用出来るよう改良・修正すること、及びランダムアクセスを効率よく実現するための条件を明らかにすることが本研究補助金で目的とすることである。このための、本研究における開発テーマは以下の2点である。 1) 物理伝送特性として高効率なものを得ること。具体的には、高速移動時におけるAP-QCPM方式のBER特性の改善。 2) 複数ユーザー同時利用時の干渉特性の解明と改善。具体的には、割り当て符号と利用ユーザー数の関係を明らかにする。 3) FHシステムにおけるランダムアクセスの特性は、多数ユーザーの送信するチップヒットの確率とヒットしたときの各ユーザーの通信品質(具体的にはBER)で決まるので、チップヒット時のBER特性を明らかにする。 ITSでは移動体間あるいは移動体と周辺環境に(固定)設置された機器との間で情報の伝達あるいは交換を行うことが基本的な(媒体の)利用方法である。このため、シンボル間における符号間干渉は比較的小さい。この環境下での特性改善のために、本年度は符号化変調AP-QCPMを考案し、伝送特性改善を実現した。具体的な改善CIRは2dBに達した。本提案システムの開発に際しては補助金で購入したSPWの利用が支援ツールとして有効であった。高速FFHに本方式を適用した場合のマルチユーザ環境での伝送特性として、チップ数52チップを用いてアクセスし、全体のほぼ半分の23チップがヒットしても、BER<10^<-2>を達成することが出来た。一層の特性改善を図るためには何らかの電力制御方式を導入することが有効であると考えられるので、これからは制御の導入を考慮する予定である。
|