本研究は、画像圧縮技術のさらなる進展を図るために、色彩情報の特徴に注目した新しい符号化方式の探索を狙いとしている。平成9年度は、初年度に当り、次の3つの課題に取り組み、以下の成果を得た。 課題(1):輝度・色差空間における画像信号の色相関特性の解析 【成果】 RGB原色空間に対して、その線形変換からなるYIQ、LMN、YES等の輝度・色差分離空間、および非線形の均等色空間CIELABを選び、自然画像を対象としてNxN画素に分割したブロック内での3色信号間の空間的相関を計測解析した。RGB原色信号に比べて相関値は低下するが、16x16以下のブロックサイズでは、なお50o/o以上の強い相関が観測された。LAB信号は輝度の色差の独立性が高く、L-AおよびL-B間では相関が低くなるものの、空間的に連続している色領域では相関を十分に利用できることが判明した。 課題(2):輝度の関数としての色差信号の符号化表現法の検討 【成果】 3色信号の内、主要な情報を担っている輝度を基準色に選び、2つの色差信号を輝度の関数で近似する符号化方式を検討した。輝度は1画素毎、色差はブロック毎に1組の展開係数を伝送することにより色情報を大幅に圧縮できる。課題(1)のいずれの輝度・色差空間においても、色差はほぼ1次関数で近似可能であり、さらに1次の係数(勾配とオフセット)の間にも相当の相関が残ることが明らかとなった。 課題(3):色再現誤差のシミュレーション評価 【成果】 符号化に最適な色空間の選択を目的として、課題(2)の符号化を適用した場合の再現画像の色差をシミュレーションにより評価した。その結果、非線形のCIELAB空間が色差最小となり、ブロックノイズも少ないことが判明した。 次年度はこれらを基に、基準色画像にJPEG等の変換符号化を併用して、より効果的な圧縮法の検討を進める予定である。
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