研究概要 |
本研究は、色彩画像の統計的特徴に注目した新しい符号化方式の探索を目的としている。平成9年度は、色差信号を輝度信号の関数で近似する相関符号化法を提案し、輝度色差空間としてCIELABが最適であることを実験検証した。10年度には、明度画像にJPEGおよびウェーブレット符号化を併用した場合の圧縮効率とブロック雑音について検討した。本年度は最終年度に当り、輝度・色差の相関をより効果的に利用するために、新たに3つの課題に取組み以下の成果を得た。 [1]色領域の識別 カラー画像は固有の物体色をもつ色領域からなり、異なる色領域を識別分割することにより、色領域毎の特徴を符号化できる。ここでは3次元色空間の距離尺度により色領域の分割を試みた。距離尺度としてEuclid距離、Mahalanobis距離、および最尤法における識別関数を用いた場合について検討した結果、最尤法、Euclid距離の順に優位性が得られたが、処理効率の点からEuclid距離が実用的と判断した。 [2]主成分の射影による色度情報の符号化 各色領域の主成分析を行い、色情報を第1主成分の中心ベクトルと固有ベクトルに代表させることにより色情報の圧縮を試みた。第1主成分軸に沿って明度L^*値を2次元色度面へ射影することにより(a^*,b^*)を推定することができ、L^*と主成分パラメータのみから近似的に色度を復元できることが確認された。 [3]クラス番号の圧縮 本方式では、分割された色領域を識別するクラス番号の圧縮が全体の情報量を左右する。この識別番号を誤ると色再現は全く成立しないので、クラス番号の圧縮には可逆符号化を適用することとし、ハフマン、LZW、算術符号等を評価した。適応的算術符号やLZWにより、クラス番号は1/20程度まで圧縮可能であった。また、分類クラス数を8〜16とすれば、再現色差ΔE^*_<ab>=6〜7が得られることが判明した。
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