本研究は、遠方の対話者とあたかも1枚のガラスを通して話しているかのような臨場感ある画像通信を実現するTV電話システムに関するものである。通常のTV電話では、カメラをモニタ上部または横に設置せざるを得ない。このため、対話者の視線が一致することはなく、不自然な映像となる。また、人間は単眼でもその位置を移動させることにより、ある程度の立体感を得ることができる(運動視差)。本研究の目標は、仮想的な視点における映像を生成するバーチャルカメラにより話者の視線における画像を生成すると同時に、視点移動に応じた擬似3次元的な映像を通常の2次元モニタ上に表示することにより、臨場感ある画像通信を実現することにある。具体的には、モニタ上部の液晶ディスプレイを用いて2次元のビームパタンを照射し、モニタ横に設置した2台のTVカメラの映像を解析することにより、対話者(送信側)の頭部形状をリアルタイムに計測し、3次元モデリングを行う。次に、受信側対話者の視点を検出して送信側に伝送し、上で述べた仮想的な視点情報とする。さらに、そこからガラス越しに見えるであろう対話者頭部のモニタ上への射影(2次元画像)を求め、これを受信側に伝送してモニタ上に表示する。本年度の具体的な実施項目は以下の通りである。 (1)人間頭部模型を用いた3次元計測システムの試作 (2)液晶ビームパタン方式(ラスタ、および2次元コード)の検討および評価 (3)OpenGLを用いたテクスチャマッピング処理速度の評価 (4)視点位置計測方式の検討 (5)話者視点画像による擬似3次元表示の評価 (6)本システムにおける問題点の抽出
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