研究概要 |
低軌道衛星通信システムの多元接続性能に関する研究を行った.各衛星がマルチビームアンテナを持ち、それによってサービスエリアを複数のセルに分割し周波数の再利用を図る低軌道衛星通信システムを考えた.このようなマルチセル構成は,地上の陸上移動体無線システムでも用いられている.しかし、地上系では各セル中央に基地局位置し伝搬距離(損失)の違いによってセルの分離が行われるのに対し,衛星系では同一の衛星が複数のセルの基地局の役割を果たし衛生のビームによってセルは区別されるという違いがある.この結果,セル方式の通信システムの特性を決定する多元接続干渉の振る舞いが,地上糸と低軌道衛星系では大きく異なり,従来の地上系での議論を単純に適用することはできなくなる.そこで本年度は,多元接続方式として符号分割多元接続方式(CDMA)を用いた場合について,衛星のビーム形状が低軌道衛星通信方式に与える影響について理論検討を行った.具体的には,各セルの大きさを均一に保つようなビーム構成と,セルサイズにアンバランスを許した同一のビーム幅をもつアンテナを各セルが使用するような方式の2者を比較し特性を明らかにした.また,CDMA方式における特性改善技術である干渉除去方式についても,特にマルチメディア信号を対象として検討を行った. ところで,マルチセン構成の低軌道衛星通信システムでは,衛星の移動に伴いユーザの所属するセルが変わっていくハンドオーバが発生する.そこで,ハンドオーバに対処するために,各セルにあらかじめ固定的に割り当てた回線と,必要に応じて任意のセルに割り当てられる回線という回線の2重構造を考え,その特性改善効果を示すことも行った.
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