マルチメディアネットワークにおけるサービス競合を拡張有限状態機械でモデル化し、下記の通りサービス競合の検出と解決について検討を行った。 1. サービス競合の検出 従来のサービス競合検出法は、次の2つに分かれる。(1)サービス競合を必要十分条件で検出するが、その検出時間はサービス数、ユーザ数に関する指数関数時間を要するもの。(2)サービス競合が存在しない場合は正しく判定するが、サービス競合が存在する場合はサービス競合でない冗長な部分を含めてサービス競合と判定してしまう可能性があるもの。しかし、その検出時間はサービス数、ユーザ数に関する多項式時間しか要しないもの。本研究では、(1)の検出時間の問題を緩和し、(2)の必要十分条件でサービス競合を検出できない問題を克服するため、各サービス毎に実行可能な状態遷移を展開させる「サービス対応展開法」を提案した。本手法は、展開中の状態に対してその状態に到達するためには少なくとも到達しておかなければならない他のサービスの状態のみをシステム状態として保持するので、その量が少なくて済み、サービス競合に至る展開系列を把握できるので、サービス競合の解消が容易という特長がある。 2. サービス競合の解決 本研究では、サービスに関わる全てのユーザの状態を収集することにより、サービス実行段階で異常状態の出現というサービス競合を解決する次の2つの方法を考案した。 (1) 正常状態を定期的に保持し、異常状態が出現するとその最も新しい正常状態に復帰させる方法 (2) 異常状態が出現しないための十分条件を設定し、状態遷移が実行可能でもその十分条件を満たさない場合には状態遷移を実行させない方法 (1)の方法はサービス実行時に正常状態を保持するというオーバヘッドがあり、(2)の方法は実行可能な状態遷移の実行を制限させるという欠点がある。(1)と(2)の方法の間には、トレードオフの関係がある。更に、本研究では(2)の方法の実行制限を緩めた方法も考案した。
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