研究概要 |
動き検出を画素単位より高い精度で行うことの重要性は,近年,この分野の研究者に共通の認識になってきている.このような高精度の動き検出が大幅な演算量の増加なしに可能となれば,動画像符号化のみならず,動画像処理や画像認識などの分野においても広く活用することが可能になるものと期待できる.しかし,直接的に画素間の補間を行った後に高精度のテンプレートマッチング(以下TMという)を行うことはただちに大幅演算量の増加をもたらすため,何らかの高速計算手法が必要となる.明示的な形で画素間の補間を行うことなしに,すなわち直接的には標本化されたディジタル画像のみを用いて,見かけの平行移動ベクトルを高精度で検出するための手法の開発することが本研究の目的である. 本年度の成果を以下にまとめて述べる. (1)ディジタル画像の補間モデルとして,(a)標本化関数に基づく理想的なモデル,(b)標本化関数と窓関数を併用するモデル,および(c)双一次補間に基づくモデルのそれぞれについて検討を行った. (2)上記の(a)〜(c)のモデルによって記述される補間画像に対する連続的なTMは積分形式で定式化される.この連続的TMの問題は,標本値のみを用いた離散的なTMの問題に等価的に変換でき,かつ画素の整数倍ではないような平行移動ベクトルを検出できることを理論的に明らかにした.またそのための計算アルゴリズムを開発した. (3)静止画像を入力画像として,また入力画像に対して微小な位相推移を与えた画像をテンプレートとしてシミュレーション実験を行い,本手法の有効性を検証した.電子情報通信学会総合大会(1997,1998),映像情報メディア学会年次大会(1997),および映像メディア処理シンポジウム(1997)などにおいて,これらの成果の一部を発表している(予定を含む).
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