研究概要 |
本研究代表者が提案した,次元非線形エルゴード写像から生成されるカオス2値系列がストリーム暗号システムの鍵ストリームとして有効であることを確認し,また,確率論的立場による暗号強度評価法を検討したので,以下にまとめる. 1.予測不可能な等頻度の2値系列である,理想的なi.i.d.の系列となるための写像のパラメタや閾値設定の条件を調べ,2次および高次の自己/相互相関関数を評価した.計算機シミュレーションの結果,カオス2値系列がストリーム暗号システムの鍵ストリームとして有効であるだけでなく,スペクトル拡散通信における拡散符号としても有効であることを確認した.さらに,2値系列からp進系列への拡張についても検討した. 2.暗号生成器から生成される系列がi.i.d.の場合,暗号文を解読することは原理的に不可能であろう.0,1の2値系列がi.i.d.のとき,ある長さmのパタンの頻度に関する頻度分布はガウス分布に従うという中心極限定理が成立する.したがって、確率論的立場による暗号強度評価法として,暗号文のパタンの頻度の期待値と分散を調べる評価法が考えられる.このテストはm次および2m次の相関関数を同時に調べることになる.i.i.d.2値系列が等確率でない場合について,確率ベクトルに関するパタンとクラスの頻度の期待値と分散を理論的に評価した.
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