研究概要 |
本研究の初年度において,主音源,検出マイクロフォン,二次制御音源,誤差マイクロフォンがそれぞれ複数個からなるマルチチャンネル形能動騒音制御の適応制御を実現するための制御構造の解明と安定性を保証するための適応アルゴリズムの開発を主眼として,次のような成果が得られた。 1)一次経路の変動に対して,二次制御音を発生する適応フィルタの係数を安定に調整するための新しいロバストな適応アルゴリズムを導出し,そのロバスト安定性を証明した。この方法は不確かさの上界値が既知とした従来の手法の中で最もタイトな結果を与えており極めて安定な消音性能が得られることを理論的およびシミュレーションにより明らかにした。 2)新しく開発したアルゴリズムを4個のDSP(TMS320C40)上に実装し,自作した全長約5.5mのエア-ダクトにおいて2個の制御音源と2個の誤差マイクロフォンによる消音実験において,主音源の位置や検出マイクロフォンの切り換えによる伝搬経路の模擬した変動に対して本適応アルゴリズムのロバスト安定性および消音性能を評価し,目標周波数域において25dBから30dBの制御性能が得られた。またこれらの実験結果の検証を,実際に同定した各経路のインパルス応答を用いてシミュレーションを行い,その性能評価の妥当性についても確認を行った。 3)二次経路の変動に対しては,適応フィルタを利用したステレオ音場再生を目指しており,二つの音響伝搬行列の実時間同定,FFTおよび逆FFTの演算に基づく適応アルゴリズムを開発し,音場再生のシミュレーションにおいてその有効性を検証した。 最終年度においては,3次元音場において特に二次伝搬経路の変動に対してロバストな適応アルゴリズムを開発し,DSPを利用した音場制御においてその有効性を評価する予定である。
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